尊敬する人
開業に向けて準備を進めているとやることが山のようにあるように感じ、途方に暮れるときがあります。
単にお店をオープンするだけでなく、自分がやりたいことを表現することまで考え出すと、ゴールを自分で決めていかなくては行けなく、永遠に走り続けている感覚になります。
今も、自分の頭の整理が追いついていないのを感じます。
開業準備に直接関わるかわかりませんが、気分を一旦切り替える意味でも、今回は私の尊敬する人について書いてみたいと思います。
おじいちゃん
尊敬する人を聞かれたらそう答えると思います。亡くなってしまい、今は会えない存在です。
亡くなってから9年弱になりますが、おじいちゃんの顔は今でも簡単に思い出せます。
おじいちゃんがどんな人かと聞かれたら、自信を持って「優しい人」と答えます。とにかく孫のこと(私と弟)を可愛がってくれました。
家に友達を連れて行くと必ず友達分もおやつを買ってきてくれたり、こっそりお小遣いをくれたり、キャッチボールの相手になってくれたり、学校に送っていってくれたり(歩いて行けよって話ですが)・・・いつも私のことを考えてくれていたと感じます。
小さい頃からおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に暮らしていたこともあり、私はおじいちゃん、おばあちゃん子だったと思います。
親の仕事の都合で別々に暮らしていたときも、しょっちゅう泊まりに行っていたことを覚えています。
尊敬と言うより好きな人と言ったほうが良いのかもしれません。
ただ、自分が働いて家族を養うようになった今だからこそ尊敬できることがたくさんあります。
尊敬すること
おじいちゃんは、印刷屋さんを営んでいました。社員は、妻と娘(私のおばあちゃんと母親になります)と従業員2人という半分以上家族経営の町の小さな印刷屋です。
そんな小さな印刷屋ですが、おじいちゃんが高齢になり店を畳むまで、従業員をしっかり雇い、家族をしっかり守ってくれる仕事をしてくれたと思っています。
正直、私が開業を決意するまで、その凄さに気が付いていませんでした。自分でお店を開き、従業員を雇い、家族の生活を守る。そして、その家族は不自由なく生活ができ、私は今、新しい家族を築けている。当たり前のように感じていましたが、とてつもなく凄いことです。
まだ、私はお店すら開いていませんが、おじいちゃんのようにできるのか不安です。しかも、おじいちゃんは私よりずっと若い頃に開業しているのです。
今だからこそ、その凄さを実感できます。
お店を始めた頃の話をおばあちゃんからよく聞きます。ちなみにおばあちゃんは健在です。80代後半ですが、まだまだ元気です。私の子供、つまりひ孫になりますがしっかり面倒をみてくれます。
おじいちゃんは7人兄弟の長男で、恵まれた家庭ではなかったようです。お店を始めた当初も兄弟のためにお金を工面する必要もあったようです。
家族に、自分の兄弟に、そしてお店のこと・・・
開業当初は相当貧しい生活だったそうです。どれほどだったか想像できませんが、かなり苦労したんだと思います。
そんな苦しい状況から、最終的には私を含めて家族や従業員が不自由なく生活ができるようになったのです。
おじいちゃんの優しさは、どんなに大変でも自分以外を優先できるからなんだと思います。だけど、自分の周囲の人が喜んでくれることがおじいちゃんにとっても嬉しかったんだと思います。
今でもおじいちゃんの顔を簡単に思い出せると言いましたが、その顔は「笑顔」です。
私の中のおじいちゃんはいつでも笑顔です。
おじいちゃんの仕事、人柄を尊敬していますし、自分も家族にとってそういう存在になりたいと思っています。
別れと決意
おじいちゃんはガンで亡くなりました。調子が悪くなりだしてからは半年くらいで逝ってしまいました。
ですが、病院に運ばれるまでは自分の足でトイレに行っていましたし、亡くなる少し前には、大好きだった銭湯にも行きました。
湯船に浸かっている姿は本当に気持ちよさそうだったことを覚えています。銭湯には私の父と弟と私も付いていきました。男家族の良い思い出です。
とにかく家族の手すらほとんど借りずに人生を最後まで全うしていきました。本当に最後まで優しいおじいちゃんでした。
おじいちゃんとの別れは私が専門学校3年生の時でした。ちょうど定期試験が始まる頃に、家族から入院したと連絡が来ました。当時は県外におり、さらに定期試験前ということですぐには帰れませんでした。
いよいよ危ないという時に家族がおじいちゃんと電話で繋いでくれました。すでに人工呼吸器を付けていたようで、おじいちゃんと会話はできず、酸素が流れる音と心電図の音だけが電話越しに聞こえてきました。
私は、何を話せばいいのかわからなくなりました。
話したことをほとんど覚えていませんが、最後に「じじにかわって家族は守るから安心してね」と伝えたことは覚えています。(私はおじいちゃんのことを「じじ」と呼んでいました。)
おじいちゃんのようになりたいと決意したのは実はこのときなのかもしれません。
結局、おじいちゃんに会えたのは亡くなってからでした。
正直、亡くなる前に会いたかったですし、もっと早く帰る決断をすればと後悔もしました。
受け継ぐこと
出棺の日、私は改めておじいちゃんの凄さに触れました。
それは、お見送りに近所の子供達が来てくれたことです。
どうやらおじいちゃんが私が小さい時にしてくれたみたいに、近所の子供達にもおやつをあげたりしていたようです。
子供達はそんなおじいちゃんを見送りに来てくれました。
私はとてもうれしく思いました。変わらないおじいちゃんの優しさを。
家族だけなく周りの人にも優しいおじいちゃん。
家族を守るために仕事をがんばってくれたおじいちゃん。
生きていれば、今の私の新しい家族に会ってほしいし、娘を抱いてほしいです。
それは願っても叶いませんし、亡くなった事実は変わりません。
ですが、おじいちゃんのようになりたいと思う私はまだ生きています。
おじいちゃんがしてくれた、たくさんのことは形を変えて私の中に残っていると感じます。
それを私が受け継ぎ、いつかは私の子供が受け継ぎ・・・といつまでも家族に受け継がれていくのだと思います。
開業にむけて準備をしていると、「失敗はできない」という思いが、焦りや不安を生みます。
仕事として大切なことに目を向けていましたが、その仕事をするのは私という「人」です。
「人」としてどうありたいかを忘れてはいけないことに気が付きました。
直接的に開業に関わらないかもしれませんが、私の生き方には必要なことですので、改めて書いてみてよかったなと感じます。
カラダのメンテ
住所:長野県松本市蟻ケ崎4-9-5 MKビル2F東
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