トレーナーへの道のり〜その8:入職4,5年目〜
「トレーナーへの道のり〜その7:入職2,3年目〜」の続きとなります。この時の経験が今の自分を作るのにとても重要なきっかけになりました。
4年目
この時にはトレーナー活動の場として、地域の新体操クラブと高校陸上競技部が増えました。
高校バスケットボール部、高校陸上競技部2校、高校硬式野球部、地域の新体操クラブ、県の国体自転車競技チーム、県のJr.アスリート育成事業と合計7チームでトレーナー活動をさせていただいておりました。
7チームとなると多く見えますが、定期的(月1回以上)に伺わせていただいたのはそのうち3チームで、あとは大会前などポイントになるところを中心に伺うことが多かったと思います。
時期によっては忙しくなることもありましたが、1年で平均すると7チームを担当させていただいた感じはありませんでした。
といいますか、今このようにまとめていて初めて7チーム抱えていたことに気が付きました。
このときくらいに感じ始めていたモヤモヤした気持ちがあるのですが、今振り返ってみると、この7チーム抱えていたことに気が付かなかったことにも繋がる気がします。
そのモヤモヤした気持ちについて書いていきます。
モヤモヤの正体
「今の自分の関わり方が、本当にチームの力になっているのか?」
おそらくこれが正体だったと思います。
特に定期的に伺っていなかったチームに関しては、それを思うことが多かったと思います。
当時の私の関わり方を振り返ってみますと、チームに伺った際の選手の状態を良くすることのみに囚われていたと思います。
つまり、私は自分が関わっているその時だけをよくしようとしていたのです。
ですが実際はどうでしょうか。例えば、高校野球部員であれば甲子園に出場すること(あるいは出場して勝つこと)が目標になることが多いと思います。
できれば、自分が高校3年生の時にその目標を達成したいと考えると思います。
選手たちは入学時から限られた時間の中でその目標に向かって練習をがんばります。もちろんチームとしても目標に向かって動いています。
では、その当時の私の関わり方だとどうなるでしょうか。自分がチームを訪れたその一点を切り取って、選手にコンディションのアドバイスをすることが有用な情報になるでしょうか。
そうはならないと思います。チームや選手の目標に向かう「流れ」に一緒に乗って、チームや選手と一緒にコンディションをよくすることを考えていくことで初めて、自分は有用な情報を出すことができるのだと思います。
ですから、定期的に伺えていたチームの方が、それに近いことができており、ポイントで伺っていたチームはできていなかったんだと思います。
チームの「流れ」に一緒に乗れていなかったので、自分自身がチームに関わっている意識が弱かったのだと思います。7チームも担当させていただいて、その数を意識していなかった理由がわかる気がします・・・
とにかく当時はなんとなくモヤモヤした気持ちを抱えて活動をしていました。ですから、自分がトレーナーとして役割を果たしているのか、自分の力は成長しているのか、正直全く実感がない状態でした。
ですが、それを解決する術もわからず、自分の目の前にいる選手に対応することだけに集中していました。
解決の糸口は5年目後半につかむことが出来ました。
5年目
担当させていただいたチームのうち2チーム(高校バスケットボール部と高校陸上競技部)でのトレーナー活動が終了致しました。一つのチームは公立高校で部員数が少なくなってしまったこと、もう一つのチームは継続のお話をいただけなかったことが理由です。
自分でも力になれているのかわからなかったので、当たり前の話だと反省しています。関われせてもらったチーム・選手には申し訳ない気持ちです。
いずれにしても本当に必要な力には程遠かったのです。
この頃は、自分がどうしていけばいいのかわからずにいました。自分が成長できていない状況に焦りや不安を感じていました。
この状況から脱出する機会を与えてくださったのが、この関連の記事に何度か登場しています、とある医師です。(とある医師=先生と書かせていただきます。)
先生はある冬季競技のナショナルチームにてスポーツドクターとして選手のコンディション管理を行っている方です。
その先生のおかげで、私もナショナルチームのトレーナーとして仕事をさせていただく機会を得ることが出来ました。
先生は私がチームに合流する前に、ナショナルチームのトレーナーとして求められる事や選手の体を扱う技術を教えて下さいました。先生はそれまで培ってきた経験・知識・技術を私に伝えてくださいました。
本当にありがたい事です。
そういった準備を半年ほど行い、いよいよチームで活動するときが来ました。
ナショナルチームとの出会い
ナショナルチームの目標はオリンピックでメダルを取ることでした。所属する選手はその競技における日本トップレベルの選手です。
チームは1年間の大半を合宿という形の下で練習をしています。その合宿にトレーナーが帯同して、選手のコンディション管理をサポートするのです。
今までのトレーナー活動とは全く異なる場でした。
特に今までと違う点に帯同する期間があります。ナショナルチームの場合、1回の帯同で4,5日間となります。それを月2回くらいのペースで行かせてもらいました。(今でもそれくらいのペースで行かせてもらっています)
単発ではなく何日か帯同することにより、自分が選手にしたことが翌日(場合によっては直後)にはすぐに練習の場で結果としてわかることになります。
つまり、選手の求めることに対応できたのかがダイレクトに返ってくるのです。また、選手も目標に向かって高いレベルで練習しているので、選手は自身のコンディションを良くするためにも私にしっかりとフィードバックをしてくれるのです。
監督・コーチ・選手・スタッフが高い目標達成のために動いているチームを目の当たりにして、私は決心をしました。
「嘘をつくことはやめよう」
その決心以前も嘘をついていたわけではないですし、「トレーナーへの道のり〜その6〜」でも書かせていただいたように、背伸びした態度をしないようにも心がけていました。
それでもチームの雰囲気や選手の努力をみると改めて「嘘をつくことはやめよう」と思ったのです。取り繕って対応してもそれがチームの力にならないし、そんな人間がいてはダメだと思いました。
ですが、自分のできないことを認めてさらけ出すことはとても勇気が入りました。自己防衛といいますか、自然とできないことを隠したくなってしまいます。それは今でも思ってしまいます。
当時に限らずですが自分のできないことを認めているか、取り繕ってないかは常に振り返るようにしていました(今でもしています)。
そうやって少しずつチームの「流れ」に加わる中で、自分のすべきことがなんとなく見えてきました。
そんな中、W杯帯同という仕事をいただきました。
初めての国際大会帯同
チームに正式に合流して3ヶ月ほどだったと思います。上記のように少しずつ自分がトレーナーとしてすべき仕事がイメージできてきたかなというタイミングで、日本代表チームのトレーナーとしてW杯へ帯同させて頂く機会をいただきました。
初めての国際大会帯同やまだチームに合流して間もないこともあり不安ではありました。ですが、ベテランのトレーナーさんも一緒でしたので、自分のできることを精一杯やってこようと思い、チャレンジさせていただきました。
初めての国際大会帯同ですので、いろいろと書き残したいのですが、長くなってしまいそうですので、それはまた別の機会に致します。
帯同したW杯で、チームはメダルを獲得することが出来ました。
その時の嬉しさを今でも覚えています。
自分のことではないのに、本当に自分のことのように喜べたんです。
トレーナーという仕事の魅力を感じました。わずか3ヶ月でしたが、選手と向き合って、コンディションの管理をサポートし、実際に大会に帯同して、レースまでサポートをさせていただきました。
そうやってチームの「流れ」に乗って仕事をしたからこそ、喜びを得られたのです。
やっと自分がすべき仕事がわかった気がしました。
次回は入職6,7年目のことを書かせていただきたいと思います。ここでも様々な発見や出会いがありました。
カラダのメンテ
住所:長野県松本市蟻ケ崎4-9-5 MKビル2F東
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