冬季競技ナショナルチーム帯同記録 2021-2022シーズン(3)

query_builder 2021/05/19
トレーナー活動記録
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 前回のチームの合宿では、いつもの合宿地を離れ、暖かい環境でトレーニングをしていました。その合宿ではトレーニング負荷があがり、選手の疲労の蓄積も大きいようでしたが、環境の影響か、いつもの合宿地で行うトレーニングより疲労を感じている選手が少ない印象を受けました。

 今回はいつもの合宿地に戻ってきてのトレーニングとなりましたが、蓄積した疲労(気が付いていなかった疲労)が顕在化し、ケガや痛みが出る選手が多くなりました。

 また、今回は合宿のはじめに体力測定もあり、その測定を踏まえた上でケガをした選手をどうサポートするかがポイントになりました。

 共に帯同させていただいたアスリートサポート経験に長けたトレーナーさんの対応も含めて学んだ点をまとめたいと思います。

ウエイトトレーニングによる腰痛発生

 合宿の出だしで、ストレングストレーニングが組まれており、ウエイトトレーニングも行なわれました。

 前回の合宿より重さがあがっていたことや身体的な疲労の蓄積により、ウエイトトレーニング後に腰痛が発生した選手が2名出ました。

 スクワットやデッドリフトで痛めたようでした。

 今回のケースのような腰痛の場合は、いわゆるスポーツ外傷の部類になると思われます。一度の大きなストレスにより痛みが生じるケースです。

 反対に繰り返しのストレスの蓄積による痛みはスポーツ障害となります。気がつけば腰が痛くなっていたというケースがこれに当たります。

 今回は外傷的な腰痛ですので、患部は急性炎症が生じていることが予測されました。

 通常炎症は3日間ほど続きます。(程度や対処によりバラツキはありますが・・・)

 しかし、3日後には測定が控えています。今回の測定はワットバイクの30秒ペダリングとジャンプテストの予定となっていました。

 どちらも腰への負荷はまずまず強そうな種目でした。

腰痛選手のサポート戦略

 シーズン初めということを考慮すると、測定をパスするという選択肢もあると思います。

 ただ、測定はトレーニング効果を知るためにも定期的に実施されており、選手としてもチームとしても可能であればやっておきたいものと思います。

 測定をパスするというのは簡単な手段ですが、測定までの間にできることをしてから判断するということもできます。

 結果的には、一緒にいたトレーナーさんとも協議し、できることをしてから判断するとしました。

 私一人であれば、そのような判断ができていたかわかりません。よりリスクを取らない選択肢は測定のパスですから、選手にそちらを勧めていたかもしれません。

 しかし、今振り返ると、今シーズンがオリンピックシーズンということ、腰痛に対するサポート手段があること、選手やチームの雰囲気を守ること(作ること)など、測定に向けたサポートをする意味が多くあるように思います。

 一緒に仕事をしたトレーナーさんはそのあたりの重要性も考慮して判断したのだと思います。

 測定に向けたサポート戦略として大きく以下の3つをトレーナー間で共有いたしました。

  1. 測定日の調整
  2. 患部への対応
  3. 患部外への対応

1.測定日の調整

 測定は2日間の予定となっていました。腰痛者の測定日を2日目にまとめるという調整をすることにしました。

 これにより、炎症が治まり痛みが引くまでの時間を稼ぐことが出来ます。逆に炎症が治まりきらない間での測定は炎症の悪化を招き、治りが遅くなりますので、確実に避けなくてはいけません。

 測定日を1日伸ばすだけでも、測定できる可能性が高くなるため、このように判断することとなりました。

 チームでは測定スケジュールが組まれておりますので、コーチや測定を担当する科学スタッフなどに相談の上スケジュール調整を致しました。

2.患部への対応

 今回の腰痛は外傷的な発生要因でしたので、幹部に対する対応の原則はRICE処置です。対応すべき4つの処置であるRest(安静) Ice(冷却) Compression(圧迫) Elevation(挙上)の頭文字で、急性期の患部への対処としてRICE処置は有名だと思います。

 今回は腰部ということもあり4つ全てが出来たわけではないのですが、おおよそ患部に関してはこの方針を崩さないということはトレーナー同士の共通認識でありました。

 これだけですと、ただ指をくわえて痛みの改善を待つだけになります。できることをするという積極的なサポートのためのポイントはRestの仕方にあります。

3.患部外への対応

 例えば腰痛の場合、痛みの部位に強い張りがでることが多いです。しかし、戦略2でもあるように基本はRest、安静です。つまり患部に対して積極的に手を入れて張りを取るのはリスクが高すぎます。

 そこで、間接的に患部の張りをコントロールする手段を用いることにしました。また、今回のケガとは関係なくトレーニング疲労でかたくなっている場所(間接的にケガに影響をしている場合が多いですが)などをケアしました。

 今回の戦略は選手とも共有し、測定に向けて準備を進めました。この選手に戦略やプランを説明することも大切で、患部に負担をかけないためには選手の協力なしではありえません。

 選手やチームの理解の下、腰痛に対するアプローチを行うことがとても重要です。

結果的に

 2名の腰痛選手は、回復し測定を受けることが出来ました。測定後に腰痛が悪化することもありませんでした。

 どちらの選手も痛みが改善し測定ができて、嬉しそうにしていました。

 ケガに対して、単にトレーニング等を控えろ、休めというのは簡単なことです。ですが、トレーニングが出来ないことは目標達成に遠のくことになります。

 かといって無理なトレーニングで結果的に大きなケガにつながれば、それまでの努力は水の泡です。

 今回の経験から、考えられるリスクは排除した上で、その時点でできる最大の対策を打つことが重要と学びました。

 そして、その対策は単にカラダのケアだけでなく、スタッフ間の情報共有、スケジュール調整、選手との対話など様々です。

 それら一つ一つに気を配り、丁寧に対応していくことで結果的に選手の満足するサポートに繋がると学びました。

 今シーズンはオリンピックシーズンです。こういった一つ一つの積み重ねを続け、チームの力になれるように行動したいと思います。

 

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カラダのメンテ

住所:長野県松本市蟻ケ崎4-9-5 MKビル2F東

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